2.11. 大規模モデルのLi拡散係数
Quloud上のGPUを用いて1006原子モデルのCHGNet-MDを実行し、 Li拡散係数の温度依存性を評価した。
2.11.1. Quloud GPU計算の結果
図 2.10 本計算:1006原子モデルのCHGNet-MDによるLi拡散係数。
本計算図の600–1200 Kの5点はほぼ直線上にあり、 アレニウスフィットから \(E_a=0.296\pm0.008\) eVを得ている。
2.11.2. 文献・実験との比較
文献図11 の1006原子NNP-MDでは 0.55 eV、実験ではSIMSの0.57–0.58 eVとインピーダンス由来の 0.55 eVが報告されている。
両者の1006原子モデルは図中の組成もLi₃₇₂P₁₂₈O₅₀₆で一致し、 評価温度も600–1200 Kに重なる。それでも文献NNP-MDの0.55 eVとの差は 0.254 eVであり、原子数の違いだけには帰せない。文献の実験値 0.55–0.58 eVとの差は0.254–0.284 eVである。小さい31原子 空孔モデルの本計算値0.43 eVよりも0.134 eV低いが、両モデルは 組成と作成した構造が異なるため、この差をサイズ効果と断定しない。
したがって、同程度のモデルサイズでもCHGNetが文献の温度依存性を 再現したとは言えない。図に文献・実験の拡散係数の点は重ねていないため、 絶対値の一致は判断しない。また、高温のフィットを室温へ外挿する際には 構造・組成・軌跡長による影響を別途確認する必要がある。 図中の±0.008 eVは表示された直線フィットの不確かさであり、 構造の選び方、軌跡長、拡散係数の算出窓による系統差を含むとは限らない。
2.11.3. まとめ
1006原子CHGNet-MDの活性化エネルギー0.296 eVは、文献NNP-MDの 0.55 eVと実験の0.55–0.58 eVより低い。 フィットの不確かさだけではこの差を説明できず、構造とMD評価条件を そろえた追加検証が必要である。